Author Archives: Dolce

Violin弾きのお美っちゃん~42

傘に歌えば……



 私は慌てていないと、のろのろ歩く。ホノルルの空に浮かぶのんき雲のように遅い。

 最近ある新聞で、早足で歩ける人ほど健康だという記事を見たが、それだけが健康要因ではないと思うので、その説はさほど深刻に受け止めなかった。むしろ私は、のろのろ歩きでの「健康・長生き説」を世に送り出そうと考えている。

 歩くのが遅すぎて「なかなか前に進まないなあ」と思うことがある。片足が地面に着地しても、もう一方の足がなかなか地面から離れない。慌てるとつんのめって小走りになるが、そうでなければゆっくりテンポは変わらない。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~41

独り一人で……



 ワイキキの水族館に勤める友人のドナと会う約束があったので、水族館へ行った。早めに着いた私に入り口の従業員が、水族館の中を見ながら待つようにとすすめてく
れた。

 生きた珊瑚、熱帯の美しい魚たちはウマが合うもの同志、それぞれにひとつの水槽で仲良く暮らしている。弱肉強食の海の底から平和だけを切り取って、私たちに見せてくれている。

 泳ぐ魚たちは水槽の外をさほど意識していない様子だ。たまに、ガラスの向こう側の人間に気付いたそぶりを見せるが、警戒心はなく、「ああ、いつものことだわ。あたし見られているのね」といった具合に、魚はちょっと気取って水の中で一回転する。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~40

いつの日か紅葉を……



 オアフ島の気候は大きく分けて10月から3月までが雨期、4月から9月までが乾燥期といわれる。

 だが実際は10月も夏で、11月から先は秋のような冬のような微妙な気配を感じさせながら、秋にも冬にもならずに夏は続いていく。9月という月は、気象上の理由か、私が秋の気配を期待しているせいなのかわからないが、1年中で一番暑く感じる。

 ハワイに住んでいて懐かしく思うものに、紅葉がある。ハワイの樹木で色づくものは少ない。この暖かく穏やかな気候を喜ぶ一方で、季節が秋に向かい始めようとする時、かつて経験した四季の移りゆく日本の風情を、もう一度思い起こそうとする。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~39

似て非なる……



 ハワイでは靴を脱いで家の中に入る。この習慣は東洋系だけでなく、ローカルの大方の家庭でも同じでハワイ全般に定着している。

 布団もハワイにだけ普及しているのかと思っていたが、10数年前にカンザスの友人の家に泊まった時、「フトンを買っておいたのよ」と聞いて驚いたことを思い出す。「Futon」はアメリカ本土の、日本人をめったに見かけることのない小さな町で、英語になっていた。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~38

プカと穴の違いは……



 ホノルルの上空に穴があいて、そこに鉄の重しがぴったりとはまり、風が止ることがある。

 無論、空に穴があくはずもなく、そこに鉄の蓋がされることはないのだが、そんな感じがする天候が続いている間、人々は「蒸し暑いですねえ」「ほんとうに」と挨拶を交わす。

 「ぽかっ」とあいた穴に封じ込められた湿気の塊は、しかし、そう長く続かないので、ただひたすらに風が吹くのを待つ。すると、風は必ず戻ってくる。数日後、山側からワイキキの海岸に向けて風が流れ出す。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~37

耳をすませば……

 京都は大学生を大事にする土地柄だった。伝統を大切にする古都だが、古い因習に引き込まれない自由さもあった。京都市立芸術大学を卒業してから数年後に京都で結婚し、ハワイに移り住むまではずっと京都で暮らしていたことは以前にも書いた。

 その当時のこと。夫の母、つまり義母は京都生まれ京都育ちの京都人だった。ある日、「美智子さん、うち、御飯食べの集まりがあるし連れて行ってあげる」と誘われた。義母の所属するグループの食事会について行った。料理屋の座敷には、すでに年配のご婦人たちが座っていた。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~36

時計は時計でも……



 ハワイは本格的な夏になってきた。といっても、夏場のホノルルの平均気温はだいたい26度くらいだから「にっぽんのうだる夏」とはずいぶん違う。太陽の日差しは強烈でも、からっとした風が吹き抜ける。

 夏の楽しみはスイカ。今年、日本のテレビニュースで、初めて四角いスイカを見た。スイカは贈答品として同じサイズの箱に納められていた。冷蔵庫に入りやすいようにと改良されたそうだが、切ってお皿に乗せられるすいかはどんな格好なのだろう。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~35

声はすれども……

 私は機械に弱いと思い込んでいた。使う以前から心理的な拒絶があるものだから、機械の方も素直に動いてくれない。これまでに、車、ファクス、コピー機、コンピューター…と格闘してきた。

 電話では見えない格闘もあった。電話の具合が悪くて電話会社に電話をした時のこと。「原因がわからないけれど故障しています」と言うと、「わかりました。少々お待ち下さい。係りの者に繋げます」と、落ちついた声が聞こえた。

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Violin弾きのお美っちゃん~34

人生の彩りは……

 ピンクは私の大好きな色。淡く明るい彩りは、気持ちを楽しく元気にしてくれる。

 日曜日に、友人のシェリルと昼食をするためにワイキキのホテルへ行った。私たちは偶然にも、「私の色」のワンピースを着ていた。

 「シェリル、きれいなブルーね。よく似合ってるわよ」

 「ありがとう。これ、私のお気に入りなのよ。目と同じ色でしょう?ブルーは私の色なの」と言った。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~33

先のことは……



 最近、レーザーでの目の治療が盛んに行なわれている。レーザーによる、目や美容を目的とした治療の為にハワイを訪れる日本人は多い。

 メガネも昔に比べると随分と軽くなり、コンタクトレンズも安全で便利になった。私が16年前にハワイに来た当初、ハワイの人たちは大きなメガネをかけていた。よく見るとレンズ(ガラス製)も厚ぼったく、メガネの重みで鼻に当たる部分がへこんでいる人もいた。 Continue reading

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