Author Archives: Dolce

Violin弾きのお美っちゃん~32

生き物と人と……

 ハワイでは、犬、猫、ヤモリが大事にされている。漢字で「守宮」と書き、英語では「ゲコー(gecko)」という。ゲコーとはふざけた名前に聞こえるが、ニックネームではない。

 ハワイの住まいは自然と共存している。山があり庭があり、街路樹に囲まれている。ゲコーは毒を持たず、人間に悪さをせず、おとなしく小さな虫を食べてくれる。そして、住居の回りをパトロールしてくれるありがたい生き物なのだ。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~31

制服なのかしら……

 私は料理が上手でない。天ぷらは油が跳ねるのが怖くて作れない。魚はさばけない。凝ったものは作らない。それでも感覚的に偏りなく栄養をとっているような気がする。が、そんな気がするだけで根拠は何もない。
 
 隣家のロンは大の魚好き。2日と間を置かずに、油で魚を揚げる匂いが流れてくる。油は少しばかり古そうだ。ロンはスーパーマーケットの魚売り場で働き、休みの日には海へ釣りに出かける。

 「ああ、きょうは疲れた。8時間も働いたんだ。でも、あしたは釣りに行くんだよ。うれしいなあ」という「釣りが命」のロンなのだ。ところが、きょうはいつもより一層うれしそうな顔でロンは言った。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~30

青いパパイヤは……



 4月になりハワイはだんだん暑くなってきた。そして、これからもっともっとハワイらしい色調が濃くなっていく。空と海の「青」も、雲や船の「白」も鮮やかさを増す。街路樹の、黄、橙、桃色の花々は風に揺れて青空に遊んでいる。平和……だ。

 3月に、アメリカの軍関係に勤務する知り合いがイラクへ行った。「いつハワイに戻れるかわからない」と彼は緊張気味に微笑んで、その夜ハワイを発った。その時私は「戦争」という湿気を含んだような重苦しさを身近に感じた。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~29

ユカタの恋人よ………

 ハワイのアメリカ人が日本に旅行をして、「何が面白かった?」と聞くと、多くの人が「温泉」という。それに「旅館で着た浴衣が気持ちよかった」と、その感触をいま再び味わっているかのように、うっとりした表情を見せる。

 浴衣姿の写真を見せる時には、浴衣への想いをかみしめるように、「ユ・カ・タ」と発音する。浴衣は日本情緒とハワイの開放感が味わえる。ほっとするらしい。この「ほっとする」という感覚はハワイを訪れる人々にとっても、住んでいる者にとっても大切なことだ。「ここはハワイだから」という理由において。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~28

70歳になったら……

 てくてく…てくてく…てくてく…てくてく、私は歩いていた。

 熱を出して寝たり起きたりしていたので、同じ夢を何度も見ていたのだろうか。どこを歩いているのか分からないが、私はひとり手ぶらで、てくてく歩き続けていた。

 そこは何もない緩やかな丘のようだった。ある時は長い影法師を道連れに陽の沈む方に向かって歩き、ある時は一面灰色の雲の中を歩いているようでもあった。その道はなだらかなようでも、知らず知らずのうちに次第に険しい道になっていたようだ。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~27

ホノルルの早春に……

 常夏ハワイの冬に軽やかな春風が舞ってきた。北半球が春に傾いた。

 それでも2月は、ハワイに住む人々も風邪をひく。暖かいところだから風邪をひかないということでもない。また軽い風邪の症状は、時にはしつこく長引く。

 普通の風邪では「すぐにお医者さんに行きなさい」とは誰も言わず「ビタミンCと水分をたくさん採ることよ!」と強調し、激励する。そして「もっと悪くなったらお医者さんへ行く」と言い、結局、風邪くらいではお医者さんには行かない。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~26

友と子猫とマッサージ……

 「健康にいいこと、何かしてますか」と聞かれると「いいえ、特に何も」と答える。頷いて感心されるようなことは何もしていないが、かといって健康に悪いこともしていない。

 ハワイの人は健康に気を配っている。にもかかわらず高血圧や心臓病も多いようだ。ハワイは暑いので、人々は習慣的に濃い味に慣れ親しんできたせいかもしれない。たまに外食すると、私の味覚には辛すぎると感じることがある。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~25

父と娘と……

 私の住むアパートはハワイ式というか、自然の風が通り易い窓の作りになっている。簡単に言えば右から左に風が吹き抜ける。外の世界と一体のようなものだから、こんな住居では「孤独死」などはしないだろう。

 住人たちは隣人の生活をさりげなく観察している。ざっくばらんのように見えても、人間としての品位というものを心のどこかで重んじている。40年の伝統ある長屋だ。

 昨年のクリスマスの晩、2階に住む親子が大喧嘩をした。親子喧嘩はいつものことだが、今回は深刻だ。父親は成人している娘2人と犬を追い出した。彼女達はその夜どこからか、ひとつ車輪の取れかかったポンコツ車を駐車場に押してきて犬と住み始めた。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~24

晴れて元旦だが……

 2003年元旦。アメリカで迎える16回目の正月。そのうち15回がホノルルだ。

 一度だけ、雪のシカゴで元日を過ごした。アーカンソー、オクラホマ、カンザス、ミズーリを回って最後にシカゴに寄った。そこで元旦を迎えたのだが、刺すような冷たい風に当たりながら、ビルの谷間を歩いたのを記憶している。

 いずれにしろ日本を離れてまる15年の光陰の速さに、今、改めて驚いている。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~23

垢を落とせば……



 ホノルルのダウンタウンに、主にビジネスの人を対象に発行している新聞社がある。女性経営者のスージーは、ダウンタウンの中でしばしば事務所を移転している。従業員もめまぐるしく変わる。厳しいボスらしい。

 私たちの事務所も11月に移転したので、スージーに電話をした。

 「スージー、今のオフィスはどこなの?」と挨拶替わりに尋ねると、彼女はその意味を理解しているといったふうに笑いながら住所を言った。 Continue reading

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