Author Archives: Dolce

Violin弾きのお美っちゃん~22

積み重ねるもの……


 日の暮れが早くなり「冬」の風が吹く。ハワイの木々は相も変わらず健康的な緑のままなので「枯れ葉よ~~~」と、せつない恋心を歌うことはできないが……。

 季節はすっかり冬なのに、夜が明けるとまっすぐ射す太陽の光は眩しく、見上げる空は素直に青い。夏の間中、ダイヤモンドヘッドの背中は茶色に乾いていたが、今は時折降る雨を吸い込み、つややかな緑の衣に覆われている。

 11月の感謝祭の頃から、スーパーマーケットの駐車場や広場には大きなテントが張られ、クリスマスのもみの木が売り出される。そして12月になると、ホノルルの町はますます慌ただしくなってゆく。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~21

こっちの水は甘いか?……

 ハワイは11月から3月ごろまで雨期になる。

  といっても、日本の梅雨のようにしとしとジメジメ降り続く雨ではない。オアフ島ではワイキキが最も雨量が少ない。ワイキキ方面は青空が広がっていても、車で北に15分くらいのところにあるマノア方面の山には雨足が見えることがある。マノアは雨が多い。

 何月だったか忘れたが、マノアの友人の家でパーティーをした時のことだ。ジャングルのように南国の木々が生い茂った庭で、私たちは食事をしておしゃべりをしていた。夕方になり、そこに雨がザーッときた。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~20

器の中に……



 1989年にオアフ島ホノルルで夫と会社を設立した。ほぼ同時期にハワイ島コナでは音楽家ケン・ステイトンさんを中心に演奏団体を設立していた。メンバーは主にコーラスの人達だった。

 90年代の半ばごろから「ヴァイオリンを弾きに来ない?」という誘いの電話がかかるようになった。器楽演奏家はハワイ島には数少ないので、オーケストラ奏者の多くはオアフ島から呼ばれて行くのだった。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~19

時の心を縫う……

 秋・冬の季節にハワイ島(ビッグアイランド)コナの演奏会に出かけると、いつも山の上にある家に泊まる。コナは欧州から移住した人々が多く住んでいる。私が住んでいるホノルルとは雰囲気が違うので、演奏を頼まれると喜んで出かけている。

 山の上は、朝晩涼しいので、夜寝る時に「寒かったらこれも掛けてね」と何色もの毛糸で編まれた手編みの毛布をベッドの端に置いてくれる。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~18

横綱の大きな母は……

 左手でお箸を持って食事をしていると「あっ、左利きですか」と言われる。

 ヴァイオリン弾きだと言うと「3歳くらいから始めたんですか」と聞かれる。

 病院で胸のレントゲン写真を撮ると、医師は不思議そうな顔をする。

 ……私はそんな問いかけには頷かない。

 いろいろな場面での小さなやりとり。心の中で用意されていた答えとは違う返答があると、人は、ほんの少しだけ騙されたような顔つきを見せる。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~17

ハワイの四季は……


 長い長い夏。淡い色の小さい花びらをいくつもつけた枝々は、穏やかな風に揺れる。
 鮮やかなハイビスカスは気ままに咲く。
 花弁を閉じた赤いハイビスカスは、うたた寝をしているかのように見える。
 ピンクのブーゲンビリアの花は、固く群れをなして咲いている。
 
 ハワイを訪れる人々を、首飾りになって、その香りで出迎えるプルメリアの花も長い夏を咲き続けている。だが、熱い陽に疲れた白く柔らかな花びらは、細い薄茶色の縁どりをうっすらとつけて、風に飛ばされてゆく……。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~16

オカリナの丘で……



  子どもの頃、NHK高知児童合唱団で歌っていた。毎週土曜日の夕方には、テレビ局のスタジオでのリハーサルがあり、地元のテレビやラジオで放送されていた。

 ちょうど東京オリンピック(1964年)が開催された時にカラーテレビが放送されるようになり、私たちは練習の休憩時間に、スタジオのカラーテレビで開会式を見た。画面の色が少しぶれてにじんでいたが、赤や白の鮮やかな色は何か希望の始まりのように感じられた。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~15

自分の居場所は……

 私の行きつけの美容室のドナは、1カ月間美容室を閉めて娘とふたりでニューヨーク暮らしをしてきた。

 ドナはシングルマザーなので、普段はヘアデザイナーとして多忙な毎日を送っている。しかしこの夏は、ひとり娘がニューヨークでバレーのレッスンを受けるので、付き添いをかねて、働き詰めの自分へのご褒美もかねて休暇をとったのだった。

 ニューヨークに出かける前のヘアカットの時に、ドナはこう言った。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~14

ビールが不味かった……

 小学生の時のある日の午後だった。私は事務室の人に頼まれて音楽室に先生を呼びに行った。音楽室のドアをあけると2人の先生がタンゴのレコードを聴いていた。机の上の白い紙には赤い山桃がのせられていた。先生は私を見ると「こっちに来なさい」と手招きをして仲間に入れてくれた。

 タンゴは、いつもの音楽の時間に聴くクラシックのレコードとは全然ちがっていた。私は特別に大人の世界に招待されたような気分だった。そして、タンゴを聴きながら山桃を食べた。

 やはり小学生のある日、いつもの学校からの帰り道を友だちとゆっくりと歩いていた。途中、塀からイチジクの枝が外にせりだしている家があった。その実は日に日に熟していくのが私は気になっていた。口の中でイチジクの味を想像してみた。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~13

ばかばかしい日々を……



 「ハーレタッソラー、ソーヨグッカゼー~~~」と、今日も、オフィスの窓からホノルルの青い空を見上げて、心の中で大声で歌っている。

 実のところ、この歌謡曲を声を出して歌ったことはないのに、オフィスでコンピューターの前に座り、青空が視野に入り、ラナイ(ベランダ)からソヨソヨと流れ入るそよ風を肌に受けると、「ハーレタッソラー、ソーヨグッカゼー~~~」が、なぜか、どこからか、私にだけ聞こえてくる。 Continue reading

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