Author Archives: Dolce

Violin弾きのお美っちゃん~12

この島のどこかで……

 友人のヴァイオリンが盗まれた。なくてはならない、かけがえのない、大切なものが盗まれたのだ!

 イオラニとは、私がハワイに来てからすぐに親しくなったので、もう10数年のおつきあいになる。彼女は出身校でもあるハワイアンの伝統的な学校でオーケストラを教えている。私たちはいっしょに音楽をしたり、ヨーグルトショップでおしゃべりをしたりして愉快な時間を過ごしてきた。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~11

大らかなる離婚後……

 ハワイ島で小学校の先生をしている友人のミッシェルがホノルルに出てきたので、私たちはコーヒーショップでおしゃべりをした。私は減量ダイエットに成功して気が緩んでいるところだったので、この機会に甘いケーキを注文し、それにアイスティーもうんと甘くして飲むことにした。

 この前ホノルルで会ったのは確か3カ月くらい前だった。きょうは洋服のせいかもしれないが、ずいぶんふくよかになったような気がしたので聞いた。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~10

お日様と私と……

 
 
 黒い素材が最も紫外線を通しにくいという情報を日本のテレビ番組で知った。それも、麻のような布目の荒いものよりも、網目の細かいナイロンがよいということだ。私は、さっそく大きい黒い傘を見つけて買ってきた。

 ホノルルは貿易風が吹くので無風状態は滅多にない。そのかわり車道を横断する途中で突風の風のいたずらに悩まされる瞬間がある。風は思いもよらない時に、思いもよらない方向から吹いてくる。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~9

眼前の「遠い世界」……

 
 
 私が入学した大学の音楽学部レッスン室がある建物は、平安神宮の庭と隣あわせだった。その庭との仕切りは、古びた金網のフェンスと木々だけ。レッスン室の窓をあけて耳をすますと、観光客が神宮の庭をぞろぞろと歩いているのが感じられた。

 フェンスの金網には取り付けが緩んでいるところがあって、そこをめくると神宮の庭に出られる、という話をある日先輩から聞いた。新入生の私と友人は、さっそく建物の裏側に回った。ひんやりとした日陰に積もった、古い落ち葉をカサコソと踏みながらその破れた金網の場所を探した。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~8

教えたくなかったのに……

 
 
 雨がじとじと降る、蒸し暑い、ある土曜日の午後、私はホノルルのこども病院でヴァイオリンのミニコンサートをすることになった。ヴァイオリンと譜面台とドレスと、それに黄色い大きな紙に書いた日本語の言葉と、プログラムを両手いっぱいに抱えて、早めに病院に着いた。

 ユーモラスな表情のゾウさんの診察台や、レントゲン室のかわいい壁紙は、恐怖心を取り除いてくれる。院内の壁のいたるところに明るい大きな絵が掛けられ、天井からはカラフルな紙テープやお花がぶらさがっている。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~7

広がりのある暖かさ……

 維新の英雄といわれる坂本竜馬が、土佐の桂浜から太平洋の遥か彼方を仰ぎ見て、「この海の向こうはハワイに続いちゅうじゃろうか」と言ったかどうか、私は知らないが、彼はその後京都に行った。

 私は、高知を出てから、京都とハワイに、それぞれ人生の約3分の1弱を生きている。高知城のすぐ傍に家がある。高知城は私の遊び場だった。愛犬フォックステリアの弁慶ちゃんとのお散歩コースでもあった。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~6

笑顔と隣人と犬たちと……

 私の事務所が入っているビルは気取ったところがなく、まるで長屋所帯のような雰囲気がある。ビルの前には、両側に白いプルメリアの木が植えられているが、その他の植物は、やたらと繁殖力の強い、盗まれてもいいようなものばかりだ。

 1階は地続きでそのまま駐車場になっている。表構えばかりではなく、ビルのオーナーやテナント、ここに出入りする人たちのごく自然なやりとりが、長屋所帯のような不思議な雰囲気を醸し出している。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~5

その際は、綺麗なビーチで……
 
 とても大きなハリケーンがハワイを襲った時のことである。

 ハリケーン・イニキ。被害は相当なものだった。その前日、オアフ島には緊張感が漂っていた。午後のラジオやテレビのニュースでは、ハリケーンイニキの進路の向きはオアフ島だと報道していた。

 午後のスーパーマーケットは、食料や水を買い込む人々でごったがえした。皆、車のガソリンも満たんにして家路についた。島だから何か非常事態が起こると、外部と寸断されて物資が不足する。そうなると、食料や、トイレットペーパーや、飲料水や、ガソリンなどがしばらく手に入らなくなるのではないかと島民は危機を感じた。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~4

ホノルル・長屋暮らし……

 私はホノルル市中心部で、交通量の多い通りに面した長屋に住んでいる。この長屋は築40年以上になるらしいが、うまく造られている。安普請には違いないが、地元の人の暮らしにそくしているとでもいえようか。

 10数年間のホノルル暮らしで何度か引っ越したが、ずっと高いビルディングだった。そうしたビルと比較しても、今、私の住む長屋は、建物の向きが微妙にうまく計算されて建てられているようだ。ぎりぎりのあやういところで、太陽の光が部屋の中を直撃しないようになっている。たいしたもんだと思う。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~3

すぐに洗えばいいのだ!

 手にジンマシンが出たのでお医者さんに行った。診察の時に、体重が増えているのがわかり私はダイエットをすると医師に言った。「やりますか」と性格のよい医師は顔を引き締めて言った。「ハイッ」。私は力強く答えた。

 「……何が一番いけないかというとアイスクリームです。とくに、……のアイスクリームが一番いけません!」。私がそのアイスクリームをお店で買っているのを、まるで見ていたかのような切りだし方だった。もちろんその医師に目撃されたことなど一度もない。そして医師は私に食事療法を指導した。 Continue reading

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