Category Archives: Story – FiddlerMi 1

Violin弾きのお美っちゃん~37

耳をすませば……

 京都は大学生を大事にする土地柄だった。伝統を大切にする古都だが、古い因習に引き込まれない自由さもあった。京都市立芸術大学を卒業してから数年後に京都で結婚し、ハワイに移り住むまではずっと京都で暮らしていたことは以前にも書いた。

 その当時のこと。夫の母、つまり義母は京都生まれ京都育ちの京都人だった。ある日、「美智子さん、うち、御飯食べの集まりがあるし連れて行ってあげる」と誘われた。義母の所属するグループの食事会について行った。料理屋の座敷には、すでに年配のご婦人たちが座っていた。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~36

時計は時計でも……



 ハワイは本格的な夏になってきた。といっても、夏場のホノルルの平均気温はだいたい26度くらいだから「にっぽんのうだる夏」とはずいぶん違う。太陽の日差しは強烈でも、からっとした風が吹き抜ける。

 夏の楽しみはスイカ。今年、日本のテレビニュースで、初めて四角いスイカを見た。スイカは贈答品として同じサイズの箱に納められていた。冷蔵庫に入りやすいようにと改良されたそうだが、切ってお皿に乗せられるすいかはどんな格好なのだろう。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~35

声はすれども……

 私は機械に弱いと思い込んでいた。使う以前から心理的な拒絶があるものだから、機械の方も素直に動いてくれない。これまでに、車、ファクス、コピー機、コンピューター…と格闘してきた。

 電話では見えない格闘もあった。電話の具合が悪くて電話会社に電話をした時のこと。「原因がわからないけれど故障しています」と言うと、「わかりました。少々お待ち下さい。係りの者に繋げます」と、落ちついた声が聞こえた。

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Violin弾きのお美っちゃん~34

人生の彩りは……

 ピンクは私の大好きな色。淡く明るい彩りは、気持ちを楽しく元気にしてくれる。

 日曜日に、友人のシェリルと昼食をするためにワイキキのホテルへ行った。私たちは偶然にも、「私の色」のワンピースを着ていた。

 「シェリル、きれいなブルーね。よく似合ってるわよ」

 「ありがとう。これ、私のお気に入りなのよ。目と同じ色でしょう?ブルーは私の色なの」と言った。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~33

先のことは……



 最近、レーザーでの目の治療が盛んに行なわれている。レーザーによる、目や美容を目的とした治療の為にハワイを訪れる日本人は多い。

 メガネも昔に比べると随分と軽くなり、コンタクトレンズも安全で便利になった。私が16年前にハワイに来た当初、ハワイの人たちは大きなメガネをかけていた。よく見るとレンズ(ガラス製)も厚ぼったく、メガネの重みで鼻に当たる部分がへこんでいる人もいた。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~32

生き物と人と……

 ハワイでは、犬、猫、ヤモリが大事にされている。漢字で「守宮」と書き、英語では「ゲコー(gecko)」という。ゲコーとはふざけた名前に聞こえるが、ニックネームではない。

 ハワイの住まいは自然と共存している。山があり庭があり、街路樹に囲まれている。ゲコーは毒を持たず、人間に悪さをせず、おとなしく小さな虫を食べてくれる。そして、住居の回りをパトロールしてくれるありがたい生き物なのだ。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~31

制服なのかしら……

 私は料理が上手でない。天ぷらは油が跳ねるのが怖くて作れない。魚はさばけない。凝ったものは作らない。それでも感覚的に偏りなく栄養をとっているような気がする。が、そんな気がするだけで根拠は何もない。
 
 隣家のロンは大の魚好き。2日と間を置かずに、油で魚を揚げる匂いが流れてくる。油は少しばかり古そうだ。ロンはスーパーマーケットの魚売り場で働き、休みの日には海へ釣りに出かける。

 「ああ、きょうは疲れた。8時間も働いたんだ。でも、あしたは釣りに行くんだよ。うれしいなあ」という「釣りが命」のロンなのだ。ところが、きょうはいつもより一層うれしそうな顔でロンは言った。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~30

青いパパイヤは……



 4月になりハワイはだんだん暑くなってきた。そして、これからもっともっとハワイらしい色調が濃くなっていく。空と海の「青」も、雲や船の「白」も鮮やかさを増す。街路樹の、黄、橙、桃色の花々は風に揺れて青空に遊んでいる。平和……だ。

 3月に、アメリカの軍関係に勤務する知り合いがイラクへ行った。「いつハワイに戻れるかわからない」と彼は緊張気味に微笑んで、その夜ハワイを発った。その時私は「戦争」という湿気を含んだような重苦しさを身近に感じた。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~29

ユカタの恋人よ………

 ハワイのアメリカ人が日本に旅行をして、「何が面白かった?」と聞くと、多くの人が「温泉」という。それに「旅館で着た浴衣が気持ちよかった」と、その感触をいま再び味わっているかのように、うっとりした表情を見せる。

 浴衣姿の写真を見せる時には、浴衣への想いをかみしめるように、「ユ・カ・タ」と発音する。浴衣は日本情緒とハワイの開放感が味わえる。ほっとするらしい。この「ほっとする」という感覚はハワイを訪れる人々にとっても、住んでいる者にとっても大切なことだ。「ここはハワイだから」という理由において。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~28

70歳になったら……

 てくてく…てくてく…てくてく…てくてく、私は歩いていた。

 熱を出して寝たり起きたりしていたので、同じ夢を何度も見ていたのだろうか。どこを歩いているのか分からないが、私はひとり手ぶらで、てくてく歩き続けていた。

 そこは何もない緩やかな丘のようだった。ある時は長い影法師を道連れに陽の沈む方に向かって歩き、ある時は一面灰色の雲の中を歩いているようでもあった。その道はなだらかなようでも、知らず知らずのうちに次第に険しい道になっていたようだ。 Continue reading

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