Category Archives: Story – FiddlerMi 1

Violin弾きのお美っちゃん~27

ホノルルの早春に……

 常夏ハワイの冬に軽やかな春風が舞ってきた。北半球が春に傾いた。

 それでも2月は、ハワイに住む人々も風邪をひく。暖かいところだから風邪をひかないということでもない。また軽い風邪の症状は、時にはしつこく長引く。

 普通の風邪では「すぐにお医者さんに行きなさい」とは誰も言わず「ビタミンCと水分をたくさん採ることよ!」と強調し、激励する。そして「もっと悪くなったらお医者さんへ行く」と言い、結局、風邪くらいではお医者さんには行かない。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~26

友と子猫とマッサージ……

 「健康にいいこと、何かしてますか」と聞かれると「いいえ、特に何も」と答える。頷いて感心されるようなことは何もしていないが、かといって健康に悪いこともしていない。

 ハワイの人は健康に気を配っている。にもかかわらず高血圧や心臓病も多いようだ。ハワイは暑いので、人々は習慣的に濃い味に慣れ親しんできたせいかもしれない。たまに外食すると、私の味覚には辛すぎると感じることがある。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~25

父と娘と……

 私の住むアパートはハワイ式というか、自然の風が通り易い窓の作りになっている。簡単に言えば右から左に風が吹き抜ける。外の世界と一体のようなものだから、こんな住居では「孤独死」などはしないだろう。

 住人たちは隣人の生活をさりげなく観察している。ざっくばらんのように見えても、人間としての品位というものを心のどこかで重んじている。40年の伝統ある長屋だ。

 昨年のクリスマスの晩、2階に住む親子が大喧嘩をした。親子喧嘩はいつものことだが、今回は深刻だ。父親は成人している娘2人と犬を追い出した。彼女達はその夜どこからか、ひとつ車輪の取れかかったポンコツ車を駐車場に押してきて犬と住み始めた。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~24

晴れて元旦だが……

 2003年元旦。アメリカで迎える16回目の正月。そのうち15回がホノルルだ。

 一度だけ、雪のシカゴで元日を過ごした。アーカンソー、オクラホマ、カンザス、ミズーリを回って最後にシカゴに寄った。そこで元旦を迎えたのだが、刺すような冷たい風に当たりながら、ビルの谷間を歩いたのを記憶している。

 いずれにしろ日本を離れてまる15年の光陰の速さに、今、改めて驚いている。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~23

垢を落とせば……



 ホノルルのダウンタウンに、主にビジネスの人を対象に発行している新聞社がある。女性経営者のスージーは、ダウンタウンの中でしばしば事務所を移転している。従業員もめまぐるしく変わる。厳しいボスらしい。

 私たちの事務所も11月に移転したので、スージーに電話をした。

 「スージー、今のオフィスはどこなの?」と挨拶替わりに尋ねると、彼女はその意味を理解しているといったふうに笑いながら住所を言った。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~22

積み重ねるもの……


 日の暮れが早くなり「冬」の風が吹く。ハワイの木々は相も変わらず健康的な緑のままなので「枯れ葉よ~~~」と、せつない恋心を歌うことはできないが……。

 季節はすっかり冬なのに、夜が明けるとまっすぐ射す太陽の光は眩しく、見上げる空は素直に青い。夏の間中、ダイヤモンドヘッドの背中は茶色に乾いていたが、今は時折降る雨を吸い込み、つややかな緑の衣に覆われている。

 11月の感謝祭の頃から、スーパーマーケットの駐車場や広場には大きなテントが張られ、クリスマスのもみの木が売り出される。そして12月になると、ホノルルの町はますます慌ただしくなってゆく。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~21

こっちの水は甘いか?……

 ハワイは11月から3月ごろまで雨期になる。

  といっても、日本の梅雨のようにしとしとジメジメ降り続く雨ではない。オアフ島ではワイキキが最も雨量が少ない。ワイキキ方面は青空が広がっていても、車で北に15分くらいのところにあるマノア方面の山には雨足が見えることがある。マノアは雨が多い。

 何月だったか忘れたが、マノアの友人の家でパーティーをした時のことだ。ジャングルのように南国の木々が生い茂った庭で、私たちは食事をしておしゃべりをしていた。夕方になり、そこに雨がザーッときた。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~20

器の中に……



 1989年にオアフ島ホノルルで夫と会社を設立した。ほぼ同時期にハワイ島コナでは音楽家ケン・ステイトンさんを中心に演奏団体を設立していた。メンバーは主にコーラスの人達だった。

 90年代の半ばごろから「ヴァイオリンを弾きに来ない?」という誘いの電話がかかるようになった。器楽演奏家はハワイ島には数少ないので、オーケストラ奏者の多くはオアフ島から呼ばれて行くのだった。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~19

時の心を縫う……

 秋・冬の季節にハワイ島(ビッグアイランド)コナの演奏会に出かけると、いつも山の上にある家に泊まる。コナは欧州から移住した人々が多く住んでいる。私が住んでいるホノルルとは雰囲気が違うので、演奏を頼まれると喜んで出かけている。

 山の上は、朝晩涼しいので、夜寝る時に「寒かったらこれも掛けてね」と何色もの毛糸で編まれた手編みの毛布をベッドの端に置いてくれる。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~18

横綱の大きな母は……

 左手でお箸を持って食事をしていると「あっ、左利きですか」と言われる。

 ヴァイオリン弾きだと言うと「3歳くらいから始めたんですか」と聞かれる。

 病院で胸のレントゲン写真を撮ると、医師は不思議そうな顔をする。

 ……私はそんな問いかけには頷かない。

 いろいろな場面での小さなやりとり。心の中で用意されていた答えとは違う返答があると、人は、ほんの少しだけ騙されたような顔つきを見せる。 Continue reading

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