Category Archives: Story – FiddlerMi 1

Violin弾きのお美っちゃん~17

ハワイの四季は……


 長い長い夏。淡い色の小さい花びらをいくつもつけた枝々は、穏やかな風に揺れる。
 鮮やかなハイビスカスは気ままに咲く。
 花弁を閉じた赤いハイビスカスは、うたた寝をしているかのように見える。
 ピンクのブーゲンビリアの花は、固く群れをなして咲いている。
 
 ハワイを訪れる人々を、首飾りになって、その香りで出迎えるプルメリアの花も長い夏を咲き続けている。だが、熱い陽に疲れた白く柔らかな花びらは、細い薄茶色の縁どりをうっすらとつけて、風に飛ばされてゆく……。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~16

オカリナの丘で……



  子どもの頃、NHK高知児童合唱団で歌っていた。毎週土曜日の夕方には、テレビ局のスタジオでのリハーサルがあり、地元のテレビやラジオで放送されていた。

 ちょうど東京オリンピック(1964年)が開催された時にカラーテレビが放送されるようになり、私たちは練習の休憩時間に、スタジオのカラーテレビで開会式を見た。画面の色が少しぶれてにじんでいたが、赤や白の鮮やかな色は何か希望の始まりのように感じられた。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~15

自分の居場所は……

 私の行きつけの美容室のドナは、1カ月間美容室を閉めて娘とふたりでニューヨーク暮らしをしてきた。

 ドナはシングルマザーなので、普段はヘアデザイナーとして多忙な毎日を送っている。しかしこの夏は、ひとり娘がニューヨークでバレーのレッスンを受けるので、付き添いをかねて、働き詰めの自分へのご褒美もかねて休暇をとったのだった。

 ニューヨークに出かける前のヘアカットの時に、ドナはこう言った。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~14

ビールが不味かった……

 小学生の時のある日の午後だった。私は事務室の人に頼まれて音楽室に先生を呼びに行った。音楽室のドアをあけると2人の先生がタンゴのレコードを聴いていた。机の上の白い紙には赤い山桃がのせられていた。先生は私を見ると「こっちに来なさい」と手招きをして仲間に入れてくれた。

 タンゴは、いつもの音楽の時間に聴くクラシックのレコードとは全然ちがっていた。私は特別に大人の世界に招待されたような気分だった。そして、タンゴを聴きながら山桃を食べた。

 やはり小学生のある日、いつもの学校からの帰り道を友だちとゆっくりと歩いていた。途中、塀からイチジクの枝が外にせりだしている家があった。その実は日に日に熟していくのが私は気になっていた。口の中でイチジクの味を想像してみた。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~13

ばかばかしい日々を……



 「ハーレタッソラー、ソーヨグッカゼー~~~」と、今日も、オフィスの窓からホノルルの青い空を見上げて、心の中で大声で歌っている。

 実のところ、この歌謡曲を声を出して歌ったことはないのに、オフィスでコンピューターの前に座り、青空が視野に入り、ラナイ(ベランダ)からソヨソヨと流れ入るそよ風を肌に受けると、「ハーレタッソラー、ソーヨグッカゼー~~~」が、なぜか、どこからか、私にだけ聞こえてくる。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~12

この島のどこかで……

 友人のヴァイオリンが盗まれた。なくてはならない、かけがえのない、大切なものが盗まれたのだ!

 イオラニとは、私がハワイに来てからすぐに親しくなったので、もう10数年のおつきあいになる。彼女は出身校でもあるハワイアンの伝統的な学校でオーケストラを教えている。私たちはいっしょに音楽をしたり、ヨーグルトショップでおしゃべりをしたりして愉快な時間を過ごしてきた。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~11

大らかなる離婚後……

 ハワイ島で小学校の先生をしている友人のミッシェルがホノルルに出てきたので、私たちはコーヒーショップでおしゃべりをした。私は減量ダイエットに成功して気が緩んでいるところだったので、この機会に甘いケーキを注文し、それにアイスティーもうんと甘くして飲むことにした。

 この前ホノルルで会ったのは確か3カ月くらい前だった。きょうは洋服のせいかもしれないが、ずいぶんふくよかになったような気がしたので聞いた。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~10

お日様と私と……

 
 
 黒い素材が最も紫外線を通しにくいという情報を日本のテレビ番組で知った。それも、麻のような布目の荒いものよりも、網目の細かいナイロンがよいということだ。私は、さっそく大きい黒い傘を見つけて買ってきた。

 ホノルルは貿易風が吹くので無風状態は滅多にない。そのかわり車道を横断する途中で突風の風のいたずらに悩まされる瞬間がある。風は思いもよらない時に、思いもよらない方向から吹いてくる。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~9

眼前の「遠い世界」……

 
 
 私が入学した大学の音楽学部レッスン室がある建物は、平安神宮の庭と隣あわせだった。その庭との仕切りは、古びた金網のフェンスと木々だけ。レッスン室の窓をあけて耳をすますと、観光客が神宮の庭をぞろぞろと歩いているのが感じられた。

 フェンスの金網には取り付けが緩んでいるところがあって、そこをめくると神宮の庭に出られる、という話をある日先輩から聞いた。新入生の私と友人は、さっそく建物の裏側に回った。ひんやりとした日陰に積もった、古い落ち葉をカサコソと踏みながらその破れた金網の場所を探した。 Continue reading

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Violin弾きのお美っちゃん~8

教えたくなかったのに……

 
 
 雨がじとじと降る、蒸し暑い、ある土曜日の午後、私はホノルルのこども病院でヴァイオリンのミニコンサートをすることになった。ヴァイオリンと譜面台とドレスと、それに黄色い大きな紙に書いた日本語の言葉と、プログラムを両手いっぱいに抱えて、早めに病院に着いた。

 ユーモラスな表情のゾウさんの診察台や、レントゲン室のかわいい壁紙は、恐怖心を取り除いてくれる。院内の壁のいたるところに明るい大きな絵が掛けられ、天井からはカラフルな紙テープやお花がぶらさがっている。 Continue reading

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