ロコモティブシンドローム②


「日本の老人の寝たきりだけでなく、日本で入院期間がダントツ長い原因について考えた事があります。第一に、居住条件からみて個室や寝室がないため、家では病人が生活しにくい、第二に、椅子に腰掛けずに畳に座る生活が寝たきりにつながりやすい、第三に、病院や寝たきりが唯一の逃げ場になっている、等が思いあたりました。ロコモの予防では、以上の問題をどのように解決するのか興味があります。」

以前、陽子さんとのやり取りの中で、ロコモティブシンドロームについての話題が出ました。
先日のナコスカンファレンスでの議題の一つにあげて、みんなで考えました。
前回はロコモティブシンドロームについて調べたことを記載しましたので、
今回からは、本題について考えたことを書いて行きたいと思います。

まず、第一のご意見
○居住条件からみて個室や寝室がないため、家では病人が生活しにくい
これについては、そうとも言えますし、そうでないとも言えます。

確かに、日本の古い家屋や昔ながらの長屋には個室や寝室がないことが多いです。
(もちろん最近建てられた家にはあります)
印象としては、皆それが当たり前の環境なので、何とか工夫しています。
居間の隅にベッドをおき、家族の生活空間で介護をしている家庭を何度も見たことがあります。私の家でも、祖母の看病をした時に居間にベッドを置いていました。
昔の方は個室ではなく日中を居間で過ごすことが多いので、あまり違和感はないように感じます。また、家族皆で見守ることができるので、安心です。
よく外国の映画などで、病人が大きな寝室にある大きなベッドで過ごす姿を見かけますが、日本の家屋環境に慣れている私としては逆に違和感を感じてしまいます。

ただ一つ心配事は、小さく狭い家屋の場合、車椅子が通るスペースやベッドを置く位置がない可能性があることです。
このような時は、家具を移動したり、処分したりしてスペースを確保します。
どんな家屋環境でも、ご家族の協力さえあれば、何とかなることが多いです。

また、病院に入院している患者さんの場合、退院する前に理学療法士や作業療法士が出向いて家屋環境をチェックし、どのような工夫をすれば安全に生活できるかを検討します。これはリハビリスタッフの大事な仕事の一つです。患者さんが家で安全に生活できるような環境設定を考え、必要とあれば家屋改修も検討します。

少しロコモティブシンドロームから話がそれたような気もしますが、私たちの考えはこのような感じにまとまりました。
皆さんまたご意見をください!

続く…

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8 Responses to ロコモティブシンドローム②

  1. YokoKelley's avatar YokoKelley says:

    現在では、患者さんの退院に先立ってリハビリスタッフが家屋環境をチェックするとは、1970年代(私が日本で働いていた時です!)に比べてなんたる違い、と驚いています。毎回、新しい情報を教えていただき有り難うございます。

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  2. BenClark's avatar BenClark says:

    Yukiyo San,
    Do you perform these visits to check the home conditions for patients before they leave the hospital? What do you look for? Are these inspections done according to law or just your hospital’s policy? I don’t know anything about traditional Japanese homes. It sounds like they only have one large room and no private rooms. Is that true?

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  3. YukiyoFujisaki's avatar YukiyoFujisaki says:

    陽子さん
    患者さんの家屋環境を知ることで、退院後の生活を想定したリハビリテーションの目標を持つことができます。
    以前働いていた病院では、入院直後に家屋内の写真を撮ってもらったり、間取りや段差、玄関の高さなども詳しく調査していました。

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  4. YukiyoFujisaki's avatar YukiyoFujisaki says:

    ベンさん
    コメントありがとうございます。
    後日きちんとしたお返事をしたいので、少し時間をください。

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  5. YokoKelley's avatar YokoKelley says:

    退院後の家屋環境のことをしばらく考えていました。というのは、身近な経験があるからです。昨年、私の長兄は大動脈弁置換術を受け、それは成功だったのですが、残念ながらこの病院では術後家屋環境に注意を払ってもらわなかったので、兄一家はかなり苦労をしたようです(寝室は2階、更にベッドの用意をしてなかった等)。入院したのは大都市の基幹病院です。退院後のリハビリ基準は病院によって差があると考えていいでしょうか?

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  6. YukiyoFujisaki's avatar YukiyoFujisaki says:

    陽子さん
    それはお気の毒です!
    働き始めてから、私はどんな病気であっても、リハビリテーションや退院に向けての支援は必要であると感じています。
    高齢の方の場合、たった1日寝たきりになった場合でもすぐに筋力が落ちてしまいます(廃用症候群といいます。*1)私もインフルエンザで10日間寝たきりにになったことがありますが、回復後に筋力が落ちて大変な思いをしました。
    若者でこんな状態であれば、ご高齢の方は本当に大変だろうと実感したものです。

    陽子さんのお兄様のように、循環器疾患や内科疾患、手術後の安静が原因で廃用症候群に陥ってしまう方は非常に多いです。
    また、循環器の病気であれば、心大血管リハビリテーション*2としての介入が可能な病院もあります。明らかに心肺機能や身体機能(筋力や持久力)が低下している場合、リハビリテーションの適応になるとおもいます。
    例えば私が勤めている病院の場合、施設基準*3に満たないため、心大血管リハビリテーションとして介入することはできませんが、術後の廃用症候群として介入しています。
    大抵のリハビリテーションスタッフは、心疾患に関する医学的知識とリハビリ上の注意点、リスク管理を理解しています。
    現在も生活に支障が生じているのであれば、最寄りの、外来リハビリテーションを行っている病院に相談してみてはいかがでしょうか?

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  7. YukiyoFujisaki's avatar YukiyoFujisaki says:

    *1廃用症候群
    http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n337/n337002.html

    Click to access 59-H2203-1.pdf

    *2心血管リハビリテーション、心大血管リハビリテーション

    Click to access JCS2012_nohara_h.pdf

    *3心大血管リハビリテーションの施設基準
    http://pt-ot-st.net/22rehakaitei/kakuron/2010/10/post_3.html

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  8. YokoKelley's avatar YokoKelley says:

    幸代さん
    詳細に調べて頂き感謝しています。兄の症状を挙げてみると、おっしゃることに全て合点が行きます(手術の日時を間違えていました。昨年ではなく2010の末でした)。筋力低下のため術後しばらくリハビリに通っていましたから、引き続きあちこちの施設のお世話にはなっていると思いますが、参考資料を読ませて頂いていると、私自身もしっかりせねばと自戒せずにはいられません。

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