医療川柳3



そこの米持って帰りと細き声

そこのこめ もってかえりと ほそきこえ



病気の後遺症で、声が出にくくなってしまった高齢の患者さんのお話です。
いつものようにリハビリを終えた後、
「お疲れ様でした。また明日来ますね。」
と挨拶すると、普段はうなづいてくださるだけなのに、何やら必死に訴えています。
声はほとんど出ませんが、口の形とわずかな息の音から、”そこにある米を持って帰りなさい”とおっしゃっているようです。
きっと彼女なりの精一杯のお気遣いなのでしょう。
もちろん近くにお米はありませんし、簡単に受け取るわけにもいきません。
でもお気遣い頂く気持ちは嬉しいので、
「お気持ちだけで十分です。私たちは○○さんが元気になってくださることが1番嬉しいんですよ。」
とお礼を言ってその場を去りました。
後でご家族にそのことを話すと、
「元気な頃から自分の家で育てたお米をいろんな人にあげるのが好きだったからね。」
とのことでした。


自身の体調が悪くてしんどいはずなのに、他の人を気遣う今の姿。
元気に農業を営み、毎日手間をかけ、丹精込めて作ったおいしいお米を、来る人来る人にあげている彼女の生き生きした病前の姿。
病気をしてたくさん変化があっただろうに、彼女の心の優しさは変わらないのだなと、胸が熱くなりました。。


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