カメハメハ・スクール入学基準は人種差別?(3)

新たな局面を迎えた裁判 その行方を探る
 
チャールス・ビショップ
カメハメハ・スクール実現の立役者
初代理事長

 
 十八歳のバーニスと結婚し、三〇年の結婚生活はもとより、ハワイのリーダーの一人になっていたチャールス・ビショップ氏は妻の遺言に従い、カメハメハ・スクールの初代理事長として、一八八八年十二月 カメハメハ・スクール創立を宣言した中で、「妻バーニスの意思に従い、ハワイアンが生存競争の世界で生き残る機会を提供するため、ハワイアンの教育を優先する」 とし、一八九七年二月十一日付けの手紙では、「バーニス・ビショップ王女の遺言では 「白人の子弟の入学を拒否しているわけではない」 としながらも 「入学はハワイアンの血を持つ子弟に限ることを理事会で合意している」 とした。
 
 更に、バーニス・ビショップの遺言の 「その収入の一部は特にハワイアン、又は、ハワイアンの血を一部持つ孤児や恵まれない子弟の福祉並びに教育に使う」 の個所に関しても、バーニスが本当に言いたかったのは、「ハワイアンの教育を優先させるということで、他人種の子弟の入学を禁止することではない」。しかし、現在の状況においては、ハワイアンのみを対象とせざるを得ない。「いつの日か、この方針は変更することになるだろう」
 
 明らかにチャールス・ビショップは、バーニスを一番よく知っている者として、バーニスの遺言を上記のように解釈した。アラン・ケイ・ホノルル連邦法廷判事のカメハメハ・スクールの入学基準を合憲とする判決は、バーニスの夫、チャールス・ビショップの遺言解釈に基づいている。
 
 第九連邦上告巡回裁判所の二〇〇五年八月二日の判決は、三人の判事の合議で決定したが、実は、二対一の一票差の決定だった。判決主文を書いたのは、ジェイ・バイビー判事、どちらかというと保守的と見られているメルビン・ブルネッティ判事の二判事が違憲、スーザン・グレイバー判事が、ただ一人カメハメハ・スクールの入学基準は合憲であるとの判決を下していた。グレイバー判事の合憲の理由は、「人種問題ではなく、政治問題であり、連邦政府並びに議会は、ハワイアンを特定の人種としてより、連邦政府と特定の関係にある政治的なグループである」 とし、アラン・ケイ判事の見解を踏襲していた。
 
 カメハメハ・スクールが創立された一八八七年、その母体となったビショップ財団は、土地は全ハワイの一七%の膨大なものではあったが、現金は全くなかった。バーニスはその遺言の中で、土地を使って現金を手に入れ、後者の建設、学校の運営費に使うと指示しているが、チャールス・ビショップは個人の資産を使って、先ず、カリヒに最初の校舎を建設、続いて、一八八九年には、バーニス・パウアヒ・ビショップ博物館を作った。
 
 チャールス・ビショップは、一八二二年ニューヨークに生まれた。一八四六年、友人のウイリアム・リトル・リーとハワイに来たビショップは、一八五〇年当時まだ一八歳だったバーニスと結婚することになる。バーニスの両親はこの結婚には反対し、結婚式に参列したのは極僅かだったと伝えられている。

 バーニスは子供の頃から義理の兄にあたる ロット・カメハメハ(後のカメハメハ五世)の許婚であり、ロット・カメハメハが王位継承の第一にあったことから、女王になるべきものとして教育されていた。

 バーニスがチャールス・ビショップと結婚したことが直接関係するかどうかは定かではないものの、ロット・カメハメハは王位を継承し、カメハメハ五世となってからも結婚せず、一八七二年息を引取る数時間前の十二月十一日、バーニスに王位を譲りたいと希望した。しかし、バーニスが王位継承を拒否したため、カメハメハ五世は後継者がないまま他界してしまった。バーニス・ビショップが、四一歳の時であった。
 
 その時、バーニスが王位を継承して欲しいと考えていたのは従姉妹にあたるルース・ケエリコラニであったが、当時のハワイ王国憲法に従って議会が王位継承者を選ぶことになった。カメハメハ大王の最後の直系として残った二人は、バーニスとルース王女のみで、ルース王女が残した遺言でその土地は全てバーニスに相続されることになった。

 チャールス・ビショップはバーニスと結婚後、終身貴族院議員となったばかりか、政府の重職を務め、現在のファースト・ハワイアン銀行の前身であるビショップ・アンド・カンパニー銀行を立ち上げている。

 ハワイでの全てをやり遂げ、七十二才となったチャールス・ビショップは一八九四年引退し、サンフランシスコに移った。一九一五年、九三歳で帰らぬ人となったが、引退生活を送ったサンフランシスコからカメハメハ・スクールの理事とは連絡を取り合い、カメハメハ・スクールとは切れることはなかった。ビショップはその遺言で、マウナ・アラにあるカメハメハ王室廟内の妻、バーニス・パウアヒ・ビショップの隣に埋葬されている。

(つづく)

 

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