人生の彩りは……
ピンクは私の大好きな色。淡く明るい彩りは、気持ちを楽しく元気にしてくれる。
日曜日に、友人のシェリルと昼食をするためにワイキキのホテルへ行った。私たちは偶然にも、「私の色」のワンピースを着ていた。

「シェリル、きれいなブルーね。よく似合ってるわよ」
「ありがとう。これ、私のお気に入りなのよ。目と同じ色でしょう?ブルーは私の色なの」と言った。
シェリルはヴァイオリン指導と演奏の、音楽一筋の人生を歩んでいる。だが半年前、結婚生活に幕を引いた。離婚が成立するまで6年もかかったという。彼女の晴れ晴れとした表情に淡いブルーはよく映っていた。
13歳の娘さんはまた背が伸びた。彼女は、そんな成長を父親とも共有するために、毎週水曜日にはお父さんに会いに行っている。
日本人の離婚も増えているが、アメリカ人にとって離婚は全く珍しいことではない。離婚後、元夫婦は親友としておつきあいを続けるというのも少なくない。確かに誰かが傷ついてはいるが、そこからまた新しい道が開けるようにと考えている。
ハワイの友人夫婦はお互いの名前を呼び合っている。子供に向かって、「あなたのお父さんに聞いてごらんなさい」とは言うが、夫婦がお互いに「お父さん」「お母さん」とは呼ばない。
時に、「ハニー」と呼んでいるのを耳にするが、それを聞くと人ごとながらちょっとくすぐったくなる。ずっと昔に、「アメリカ人はダーリンと呼び合うのかしら」と想像したことがあるが、それは古い表現なのか1度も聞いたことがない。
友人に「ダリーン」というフラダンスの名手がいる。はじめて名前を聞いた時には「ダーリン」を連想してちょっとくすぐったい気持ちがした。しかし彼女は、「みんな1度で名前を覚えてくれるのよ」と嬉しそうに言った。
ダリーンは、時々、日本へフラダンスを教えに行っている。お弟子さんはこの名前がお気に入りだそうだ。5人の子供のおおらかな母であり、優美なフラダンスを踊る妻のダリーンを、夫のニックはとても誇りに思っている。
ロリースとジェフは、今、結婚の準備をしている。ロリースはフライトアテンダントで、背が高く、優しさと大胆さを持っている。ジェフはパパイヤの品種についての調査と研究をしている。ロリースより背は低いが、逞しさと繊細さを持っている。
2人はパールシティーの丘の上に、古い一軒家を買った。庭はまだ改造中だったが、業者を一切雇うことなく、2人だけで5カ月かけて改築した。私と夫と愛犬ドルチェは、完成前の新居に早々と招待された。
ロリースが素敵なアイデアをひらめかせ、ジェフがロリースのインスピレーションを現実のものにしている。家には2人の「心と智恵」が詰まっていた。
壁をぶち抜き、出窓や棚を作り、床を張り替えていた。棚にはジェフがハワイの木で作った木工細工が飾られている。それは、何十年もの経験を持つ職人さんが作ったように、精巧に型取られ、削られ、磨かれていた。
「いつかハワイの木でヴァイオリンを作って!」と、私は頼んだ。
以前、ロリースの両親、ユーエンさんの家で大晦日の花火大会があった。家の前に建てられていた大きな打ち上げ花火台はジェフが作ったものだった。ジェフは日系4世で、かつておじいさんが物作りや家作りをしているのを見て、自然に覚えたという。
「中国人はお金持ちにならないと成功したと思わないけれど、日本人は違う。日本人の職人さんが物凄く集中して、精魂込めて小さな楊枝を削っているのをテレビで見たことがあるの。本当の人生の成功とはそういうことだと思うわ」と、ロリースが言っ
た。
ひとりの人への尊敬が、国への尊敬にも繋がっている。
「いつか1度日本に行ってみたいね。日本の職人さんが作った工芸や建築を見てみたいね!」と、2人は顔を見合わせて深く頷き合った。
ことばにならないものを、想像力によって長い歳月をかけて削り、失敗してはまた削り、磨く。やがて、その人の深い想いは、美しい彩りと形を帯びてくる。
私たちの人生も、そうして織られて、「私の色」になっていくのかもしれない。失敗もまた、新しい彩りに変えられて……。
(毎日新聞USA連載)
